AXC原理

AXC原理|側近が権力者の現実をつくる原理

これは、
すべての組織で、
起きることではない。

権力者が、
現場との接点を失う。

異なる立場からの報告を、
受け取らなくなる。

そして、
一人の側近へ、
現実の解釈を委ねた時に起きる。

権力を持つ人は、
自分が、
組織の全体を見ていると思う。

多くの情報が集まり、
多くの人が報告し、
最後の判断を、
自分が下している。

だから、
自分が最も、
現実を知っていると思う。

だが、
権力者が直接見られる現実には、
限界がある。

現場で、
何が起きているのか。

誰が、
仕事を動かしているのか。

誰の判断によって、
混乱が生まれたのか。

誰が、
その混乱を修正したのか。

権力者は、
その全てを、
自分の目で確認することはできない。

だから、
報告を受ける。

ここで、
権力者の現実は、
報告者の言葉によって、
つくられる。

何を伝えるか。

何を伝えないか。

誰の失敗を報告するか。

誰の成果を報告するか。

出来事を、
どの順番で語るか。

誰を、
問題のある人物として見せるか。

その選択によって、
同じ現場でも、
権力者が見る景色は変わる。

報告者が、
自分の失敗だけを、
小さく語る。

他者が修正した過程を、
語らない。

最後に出た成果を、
自分の成果として伝える。

異論を言う人を、
協調性のない人として伝える。

自分に都合の悪い事実を、
些細な問題として扱う。

すると、
現実とは逆の人物評価が、
権力者の中につくられる。

失敗した人が、
仕事をまとめた人になる。

修正した人が、
混乱を起こす人になる。

現場を支えた人が、
扱いにくい人になる。

成果を横取りした人が、
忠実で有能な人になる。

権力者は、
その報告をもとに、
人を評価する。

役割を与える。

権限を与える。

人を外す。

そして、
自分は、
正しい判断をしていると思う。

だが、
その判断の前提となる現実は、
すでに、
報告者によって編集されている。

権力者が、
報告者を使っているように見えて、
実際には、
報告者が、
権力者の目と耳を使っている。

権力者の名によって、
自分の判断を通す。

権力者の権限によって、
自分に都合の悪い人を遠ざける。

権力者の評価によって、
自分の地位を守る。

一番上にいる支配者が、
最も下の現実を知らない。

そして、
現実を知らないまま、
報告者の都合によって、
組織を動かしていく。

報告者は、
権力者へ服従しているように見える。

だが、
服従することで、
権力者の信頼を得る。

権力者が聞きたい言葉を伝える。

権力者が正しいと思える物語をつくる。

その代わりに、
権力者の権威を借りる。

こうして、
上から下への支配の中に、
下から上への支配が生まれる。

権力者は、
命令する力を持っている。

だが、
何を命令するかを決める現実認識は、
報告者に握られている。

権力者が、
一人の報告者だけを信じるほど、
その支配は強くなる。

現場へ直接聞かない。

異なる立場の話を聞かない。

反対意見を、
敵意として退ける。

自分に従順な者の報告を、
忠実な事実だと思う。

すると、
権力者は、
自分に都合のよい情報だけが流れる、
閉じた世界へ入っていく。

その中では、
自分の判断は、
いつも正しい。

問題が起きるのは、
反抗する人のせいである。

成果が出るのは、
自分と側近の力である。

だが、
現場では、
別の人が混乱を修正し、
別の人が信頼をつなぎ、
別の人が結果を形にしている。

権力者だけが、
それを知らない。

これは、
報告者だけの責任ではない。

権力者にも、
自分が聞きたい報告だけを、
選んだ責任がある。

従順な人の話を、
検証せずに信じた。

異論を言う人へ、
直接確認しなかった。

結果だけを見て、
過程を見なかった。

成果物だけを見て、
誰が何を担ったのかを見なかった。

報告者に騙されたのではなく、
自分に都合のよい現実を、
報告者と共につくったのである。

権力者が、
現実を取り戻すために必要なのは、
報告者を増やすことだけではない。

異なる立場から話を聞くこと。

判断の根拠を確認すること。

誰が何を決め、
誰が何を修正したのかを、
記録すること。

成果だけではなく、
過程を見ること。

自分へ異論を言う人を、
情報源から排除しないこと。

そして、
自分が信じたい人物像より、
現実を上に置くことである。

権力者が、
自分の耳に心地よい報告だけを選ぶ時、
報告者は、
権力者の現実を支配する。

一番上にいる者が、
一番自由に決めているとは限らない。

現実を知らない権力者は、
報告者がつくった世界の中で、
権力を行使しているだけである。

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